2026年6月13日(土)
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国際・海外

ホルムズ海峡封鎖は本当に違法なのか

―米国もイランも国連海洋法条約を批准していないという盲点

イランがホルムズ海峡を封鎖する可能性がある。そんなニュースが出るたびに、よく聞く言葉がある。

「それは国際法違反だ」

確かに、世界のエネルギー輸送に大きな影響を与えるホルムズ海峡を一方的に閉鎖すれば、国際社会から強い批判を受けるのは当然だ。日本にとっても他人事ではない。中東からの原油やLNG輸送に影響が出れば、燃料価格、電気代、物流コストにも跳ね返る。

では、イランがホルムズ海峡を閉鎖した場合、それは本当に「国際法違反」と言い切れるのだろうか。ここには、意外と知られていない盲点がある。

問題になるのはペルシャ湾ではなくホルムズ海峡

まず整理しておきたいのは、よく言われる「ペルシャ湾の封鎖」ではなく、実際に問題になるのはホルムズ海峡である。

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾と外海をつなぐ非常に狭い海峡だ。イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、UAE、カタールなど、湾岸地域のエネルギー輸送にとって重要な通り道になっている。

ここを通れなくなれば、影響はアメリカやイスラエルだけにとどまらない。日本、中国、インド、欧州、湾岸諸国。世界中の商船、タンカー、LNG船が影響を受ける。だからこそ、ホルムズ海峡の閉鎖は、単なる地域紛争ではなく、国際経済全体を揺さぶる問題になる。

国連海洋法条約では「通過通航権」がある

海のルールを定める代表的な条約に、国連海洋法条約がある。この条約では、国際航行に使われる海峡について、船舶や航空機の「通過通航権」が認められている。

簡単に言えば、国際的に使われている重要な海峡については、沿岸国であっても勝手に通航を妨げてはいけない、という考え方である。

このルールだけを素直に読めば、ホルムズ海峡を一方的に閉鎖する行為は、かなり問題がある。実際、多くの国は、ホルムズ海峡のような国際海峡について、自由な通航が確保されるべきだと考えている。しかし、ここで話は少しややこしくなる。

アメリカもイランも批准していない

意外なことに、アメリカもイランも国連海洋法条約を批准していない。

イランは署名はしている。しかし、批准はしていない。アメリカも同じく、国連海洋法条約を批准していない。

つまり、単純に「国連海洋法条約に違反しているから、海峡を開けろ」と迫っても、イラン側は「自分たちはその条約に拘束されていない」と反論する余地がある。ここが、ホルムズ海峡問題の大きな盲点である。

もちろん、多くの国や専門家は、国連海洋法条約に書かれている航行の自由や国際海峡の通航ルールは、すでに慣習国際法になっていると考えている。慣習国際法とは、条約に加盟しているかどうかにかかわらず、国際社会の一般的なルールとして認められている法のことだ。しかし、イランはそこを認めない可能性が高い。

「違法だ」と言っても、相手が認めるとは限らない

国際法の難しさはここにある。国内法であれば、裁判所や警察があり、違法行為には強制力が働く。しかし国際法では、相手国がそのルールの適用を認めない場合、すぐに強制できるわけではない。

アメリカは、航行の自由を主張する。イランは、自国の安全保障と沿岸国としての権限を主張する。どちらも国際法を語る。だが、見ているルールと重視する部分が違う。

そのため、「国連海洋法条約違反だから開けろ」という主張だけでは、イランを動かす決定打にはなりにくい。これが、ホルムズ海峡をめぐる法的な面倒さである。

ただし、武力で止めれば話は変わる

では、イランはホルムズ海峡を自由に閉鎖できるのか。もちろん、そんなことはない。

国連海洋法条約の論点では争いがあったとしても、武力を使って海峡を止めれば、話は別の段階に移る。

  • 軍艦でタンカーを止める
  • 機雷を撒く
  • 民間船を攻撃する
  • 軍事力で第三国の船舶通航を妨げる

こうなれば、問題は海洋法だけでは済まない。今度は、国連憲章上の「武力による威嚇」や「武力行使」の問題になる。イランもアメリカも国連加盟国である。国連海洋法条約については批准していないという論点があっても、国連憲章上の武力行使禁止のルールから逃れることはできない。

自衛権で正当化できるのか

イランがアメリカやイスラエルから攻撃を受けた場合、イランは自衛権を主張する可能性がある。しかし、自衛権を出せば何でも許されるわけではない。自衛権には、一般的に必要性と比例性が求められる。

ホルムズ海峡を全面的に閉鎖して、日本、中国、インド、欧州、湾岸諸国など、無関係の第三国の商船まで巻き込むとなると、それは敵対国への防衛措置というより、国際社会全体を人質に取るような圧力に近くなる。この場合、自衛権として正当化するのはかなり難しい。

「海洋法」より「国連憲章」の問題になる

つまり、ホルムズ海峡の閉鎖は、二段階で考える必要がある。

  • 海洋法上の問題:国連海洋法条約には通過通航権があるが、イランもアメリカも批准していないため法的争点が残る
  • 国連憲章上の問題:武力で船を止めた瞬間、武力による威嚇・武力行使・自衛権の限界が問われる

「国連海洋法条約違反かどうか」は争える。しかし、武力を使った瞬間に、イラン側の立場はかなり苦しくなる。

アメリカも同じ構造の中にいる

この話で忘れてはいけないのは、アメリカも国連海洋法条約を批准していないという点だ。アメリカは長年、航行の自由を強く主張し、世界中の海で自由航行作戦を行っている。しかし、そのアメリカ自身も国連海洋法条約の締約国ではない。

イランから見れば、こう言う余地がある。「アメリカも批准していない条約を、なぜこちらに押しつけるのか」

アメリカもイランも、同じ条約を批准していない。それでもアメリカは航行の自由を主張し、イランは沿岸国としての管理権を主張する。どちらも都合のいい部分を国際法として語る。だからこそ、ホルムズ海峡問題は、単純な善悪では片づけにくい。

結局、ホルムズ海峡封鎖は違法なのか

結論としては、こう整理するのが一番正確だ。

ホルムズ海峡の閉鎖は、国連海洋法条約上はかなり問題がある。しかし、イランもアメリカも国連海洋法条約を批准していないため、「条約違反だから即アウト」と単純に言い切るのは難しい。

一方で、実際に武力で船舶を止める、攻撃する、機雷を撒く、第三国の商船まで巻き込むとなれば、問題は海洋法から国連憲章へ移る。そこでは、武力による威嚇や武力行使、自衛権の限界が問われる。

本当に問われるべきは、条約を批准しているかどうかだけではない。

国際社会全体の交通路を、一国が武力で止めることを許していいのか。ホルムズ海峡の問題は、海洋法の隙間と、国連憲章の限界が同時に見える場所なのである。

📝 編集長メモ

ホルムズ海峡問題が示すのは、国際法が「力の均衡」の上に成り立っているという現実だ。条約を批准しているかどうかより、実際に海峡を守れる海軍力を持つ国の発言権が大きい。法と力のどちらが国際秩序を支えているのか、問い直す必要がある。

💰 編集長の儲け話

私なら有事リスクが高まる局面で原油先物ETFと防衛株を仕込む賭けをする。ホルムズ海峡封鎖が現実味を帯びれば原油は急騰し、LNG関連株も連動して上がる。東京エレクトロンや三菱重工のような有事関連銘柄を監視リストに入れておくのが私の習慣だ。

※本コーナーは編集長個人の見解です。投資等の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

桜坂武志

桜坂武志

DNN NEWS24 編集長

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