2026年5月31日(日)
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無期懲役は本当に何年で出てくるのか

仮釈放1人・獄死32人の最新データが示す”事実上の終身刑”

「無期懲役でも、どうせ何十年かすれば出てくる」凶悪事件が起きるたびに、こうした声を目にすることがある。特に近年は、闇バイト強盗や強盗殺人などへの不安も強まっており、「無期懲役では軽すぎる」「日本にも終身刑が必要ではないか」という議論も起きやすくなっている。

実際、法務省「令和7年版 犯罪白書 第1編 犯罪の動向」によれば、強盗の認知件数は令和4年から3年連続で増加し、令和6年は1,370件となっている。

しかし、無期懲役の実態を見ると、世間で語られるイメージとはかなり違う。現在の無期懲役は「25年で出てくる刑罰」ではない。むしろ、かなりの割合で“事実上の終身刑”に近づいている。

「無期懲役は25年で出てくる」は本当なのか

そもそも無期懲役は、刑期が決まっていない刑罰である。法務省「令和7年版 犯罪白書 第2編 第5章 第2節 仮釈放等」では、有期刑は刑期の3分の1、無期刑は10年の法定期間を経過した後に仮釈放を許すことができると説明されている。

ただしこれはあくまで”法律上、審査の対象になり得る”という意味であり、10年で出所できるという話ではない。「25年で出てくる」という話は、過去に仮釈放された一部の無期刑受刑者の平均在所年数が25年前後だった時期があり、その数字だけが独り歩きしたものに近い。

最新データでは「25年」どころではない

CrimeInfo「無期刑仮釈放者の受刑在所期間」によれば、近年の無期刑新仮釈放者の平均在所年数は以下の通りだ。

  • 令和元年:36年
  • 令和2年:37年6か月
  • 令和3年:32年10か月
  • 令和4年:45年3か月
  • 令和5年:37年4か月
  • 令和6年:38年1か月

もはや「25年で出てくる」という認識は、現在の実態とはかなりズレている。今の無期懲役は、30年台後半から40年台を前提に見るべき刑罰になっている。20代で無期懲役が確定したとしても、仮釈放される頃には60代・70代になっている可能性がある。

仮釈放率は令和6年で約0.06%

令和7年版犯罪白書では、令和6年の出所受刑者全体の仮釈放率は62.8%とされている。しかしこれは有期刑を含む全体の数字であり、無期刑に限るとまったく違う。

弁護士ドットコムニュース「仮釈放1人、獄死32人…無期懲役囚の”終身刑”化が浮き彫りに」によれば、2024年末時点で全国の刑事施設に収容されている無期懲役受刑者は1,650人、その年に新たに仮釈放された無期懲役受刑者はわずか1人だった。割合にすると約0.06%である。

つまり、「いずれ出てくる」というより、「ほとんど出てこない」と見た方が、現在の実態に近い。

出所する人より、刑務所内で亡くなる人の方が多い

2024年は、新たに仮釈放された無期懲役受刑者が1人だった一方で、服役中に死亡した無期懲役受刑者は32人に上った。一般社団法人 刑事司法未来「無期刑受刑者の仮釈放の現状と課題」でも、2024年末データとして以下が整理されている。

  • 無期刑受刑者:1,650人
  • 新受刑者:11人
  • 新仮釈放者:1人
  • 死亡者:32人

つまり現実には、塀の外に出る人よりも、塀の中で人生を終える人の方が圧倒的に多い。日本には形式上「終身刑」は存在しないとしても、無期懲役の運用は実質的には終身刑にかなり近づいていると言える。

令和6年の数字に「1人」と「2人」がある点に注意

令和7年版犯罪白書では令和6年の「無期刑の仮釈放許可人員」は2人と整理されている。一方でCrimeInfoの整理では新仮釈放者は1人とされている。統計上「仮釈放許可人員」「新仮釈放者」「仮釈放取消し後の再仮釈放者」などの扱いに違いがあるためだ。ただし重要なのは、1人でも2人でも、無期刑受刑者全体から見れば極めて少ないという点である。

なぜ無期懲役はここまで長期化したのか

法務省「平成16年及び平成22年 刑法等改正の概要」によれば、平成16年の刑法改正により有期刑の上限は15年から20年へ、加重事由がある場合の上限は20年から30年へ引き上げられた。この改正によって有期刑でも30年という長期収容が可能になり、無期刑の仮釈放審査も厳格化していったと考えられる。

また犯罪白書では、仮釈放の判断において「社会の感情が仮釈放を許すことを是認するかどうか」も重要な要素とされている。本人が長年服役しただけでは足りない。社会がその釈放を受け入れられるかどうかも、重要な判断材料になるのだ。

最近の犯罪者は、さらに出にくくなる可能性がある

今この瞬間に重大犯罪を起こして無期懲役になった人が、将来も同じ年数で仮釈放されるとは限らない。近年は闇バイト強盗・強盗殺人・無差別殺傷などへの社会的不安が強まっており、厳罰化を求める声も高まりやすい。

現時点のデータでは無期刑受刑者の仮釈放は令和6年で約0.06%。最近重大犯罪を犯した者が35年後に審査対象となる頃には、無期懲役の運用はさらに厳格化し、40年・50年、あるいは実質的な終身刑に近いものとなっている可能性もある。

「無期懲役は軽い」と言い切れる時代ではない

もちろん無期懲役と死刑は違う。被害者や遺族の感情を考えれば「無期懲役では足りない」という声が出るのも当然である。一方で、制度の実態として見るなら、現在の無期懲役は決して軽い刑罰ではない。

仮釈放される人は極めて少ない。服役期間は30年台後半から40年台に及び、出所する前に刑務所内で亡くなる人も多い。今の無期懲役は、多くの人が思っているよりも、はるかに長く、はるかに重い刑罰になっている。

参考資料

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