ドルが調達できなくなると、国家は破綻する。実は、この構造を正確に理解している人はそれほど多くない。
日本のような資源輸入国は、石油や天然ガスを海外から買い続けなければ経済が回りません。そして、その決済の多くは「ドル」で行われています。つまり極端な話、ドルがなければ、エネルギーも食料も安定して輸入できなくなる。国家経済そのものが止まりかねないということです。
では、なぜ世界はここまでドル中心になったのでしょうか。
ドルはかつて「金と交換できる通貨」だった
かつてドルは、「金と交換できる通貨」でした。しかしアメリカは、ベトナム戦争や財政赤字によって大量のドルを発行。次第に各国から、「本当に金と交換できるのか」と疑問を持たれ始めます。
そして1971年、アメリカはドルと金の交換停止を発表しました。いわゆる「ニクソンショック」です。本来であれば、この時点でドルの信頼は大きく揺らいでもおかしくありませんでした。しかし、ドルは基軸通貨として生き残ります。
石油がドルを救った――ペトロダラー体制の誕生
その背景にあったのが、「石油」です。アメリカはサウジアラビアなど産油国との関係を強化し、石油取引をドル建てで行う流れを形成していきました。石油を輸入したい国は、まずドルを確保しなければならない。その結果、世界中がドルを必要とする構造が完成していきます。
これが、現在まで続く「ペトロダラー体制」です。
アメリカが得た圧倒的な力
この仕組みは、アメリカに極めて大きな力を与えました。
- 自国通貨で世界中の資源を買える
- 国債を大量発行しても、各国がドルを必要とするため資金が集まる
- ドル決済網を通じて経済制裁の影響力も持つ
逆に言えば、「ドルを使わない」という動きは、アメリカにとって地政学上の問題になり得ます。
ドルから距離を置いた国の指導者は消される?
実際、過去にはドル以外での決済を模索した国もありました。イラクは一時、石油決済をユーロへ切り替え。リビアのカダフィ政権も、金を基盤とした通貨構想を進めていたとされています。さらにイランも、ドル以外で石油取引を行う構想を進め、ユーロや円などによる決済を模索していました。
イラクのサダム・フセイン、リビアのムアンマル・カダフィ、イランのアリー・ハメネイなど、ドル体制から距離を置こうとした国や指導者が、結果としてアメリカと深刻な対立関係になり、悲惨な末路を辿ったケースが続いていることから、「ドル基軸体制に逆らった国は潰される」という見方が、一部で強く語られているのも事実である。
脱ドルの動きと、それでも続くドル支配
そして現在、中国やロシア、BRICS諸国は、ドル依存を減らす動きを加速させています。人民元決済、金保有の拡大、自国通貨による貿易。世界は少しずつ、”ドル以外”を模索し始めています。
ただ、現時点でドルに代わる存在はまだ見当たりません。軍事力、金融市場、国債の信頼性、流動性。そのすべてを同時に備えた通貨は、依然としてドルだけです。
だからこそ今、世界は矛盾を抱えています。「ドルに依存したくない国」が増えている一方で、結局は、ドルなしでは回らない。ニュースで映る戦争や制裁、その裏では今も、“通貨”を巡る静かな争いが続いています。
