住宅ローンの世界で、ひとつの節目が来た。
住宅金融支援機構は2026年6月1日、長期固定金利型住宅ローン「フラット35」の6月適用金利を発表した。返済期間21年以上35年以下の最低金利は3.21%。現行制度になった2017年10月以降で、初めて3%を超えた。
ここ数年、住宅ローン金利はじわじわ上がっていた。それでも、多くの人の感覚としては「日本の住宅ローンはまだ低い」「変動金利なら安い」という印象が残っていたはずだ。
しかし、フラット35が3%台に乗ったことで、その前提は少し変わり始めている。もちろん、3%台だからすぐに住宅購入ができなくなる、という話ではない。ただし、当時と今では住宅価格が違う。建材費、人件費、土地価格、マンション価格が上がった状態で、住宅ローン金利だけが昔の水準に戻り始めている。ここが、今回のニュースで最も大きなポイントだ。
フラット35は、過去20年でどう動いてきたのか
3.0%ライン
過去最低(2016年8月)
0.90%
2026年6月(現在)
3.21%
最低からの上昇幅
+2.31%
フラット35は、最長35年の全期間固定金利型住宅ローンである。借入時に金利が決まれば、返済終了まで毎月の返済額が原則変わらない。そのため、将来の金利上昇リスクを避けたい人や、返済計画を安定させたい人に選ばれてきた。
過去20年ほどの動きを見ると、フラット35の金利は大きく下がり、その後、再び上昇してきた。特に2016年頃には、フラット35の金利が1%を下回る月もあり、住宅ローンとしてはかなり低い水準になった。しかし、2022年以降は流れが変わる。物価上昇、長期金利の上昇、日銀の金融政策変更を背景に、フラット35の金利もじわじわ上がり始めた。そして2026年6月、ついに3.21%となった。
なぜフラット35の金利は上がったのか
フラット35の金利が上がった背景には、いくつかの要因がある。まず大きいのは、長期金利の上昇だ。フラット35のような全期間固定金利型ローンは、長期国債の利回りや、長期資金の調達コストの影響を受けやすい。長期金利が上がれば、固定金利型の住宅ローンも上がりやすい。
次に、日銀の金融政策の変化がある。長く続いたマイナス金利政策や大規模緩和の時代が終わり、日銀は段階的に金利を引き上げる方向に進んでいる。インフレが続き、賃金上昇も進み、円安や輸入物価の影響も残る中で、金融政策は以前のような超緩和一辺倒ではなくなっている。
もうひとつは、物価上昇が一時的なものでは済まなくなっていることだ。食料品、エネルギー、建材、人件費。住宅に関わるコストは広い範囲で上がっている。住宅価格が上がり、金利も上がる。この組み合わせは、これから家を買う人にとってかなり重要な変化になる。
民間の変動金利はまだ安い。だが、そこだけ見ている人は注意したい
フラット35が3%を超えた一方で、民間銀行の変動金利はまだ低い水準にある。ネット銀行や大手銀行の住宅ローンを見ても、変動金利は1%を下回る水準で提示されているケースが多い。
ただし、変動金利は「今の金利が安い」商品であって、「将来も安い」ことが保証されている商品ではない。特に注意したいのは、現在の返済額だけを見て、借入額をギリギリまで増やしている人だ。
変動金利を選ぶこと自体が悪いわけではない。ただ、「低いから変動」ではなく、「上がっても耐えられるから変動」と考えられるかどうかが重要になっている。
4000万円を35年で借りると、返済額はどれだけ変わるのか
- 金利1.0%:毎月返済額 約11万円台前半
- 金利2.0%:毎月返済額 約13万円台前半
- 金利3.21%:毎月返済額 約15万円台後半
- 金利4.0%:毎月返済額 約17万円台後半
金利が1%台から3%台に上がると、毎月の返済額が数万円変わる。年間で見れば数十万円、35年で見ればかなり大きな差になる。これから住宅を買う人は、物件価格だけで判断するのではなく、金利が変わった場合の返済額まで含めて考える必要がある。
フラット35は、誰でもどんな家でも使えるわけではない
フラット35では、対象となる住宅にも一定の基準がある。民間の住宅ローンでは借りる人の返済能力が大きく見られるが、フラット35ではそれに加えて「この住宅を長期固定ローンの対象にして大丈夫か」も確認される。
- 一戸建て住宅などは原則50㎡以上、マンションは30㎡以上
- 省エネ性能・断熱性能に関する一定の基準
- 設計検査・中間現場検査・竣工現場検査が必要
中古住宅、小規模な住宅、断熱性能が十分でない住宅を検討している人は注意したい。金利や返済額の条件が合っていても、物件側が基準を満たさなければ利用できない場合がある。
建築中の住宅は、金利が決まるタイミングにも注意したい
フラット35は、借入申込時点の金利ではなく、原則として資金実行時点の金利が適用される。注文住宅や建築中の住宅では、完成まで数カ月かかる場合、その間に金利が上がれば、当初の想定よりも返済額が重くなる可能性がある。
「今月の金利なら返済できる」と考えている人は、ここに注意したい。特に今のように、月ごとに金利が大きく動く局面では、申込時の金利だけで資金計画を組むのは危うい。
低金利前提の住宅購入は、見直しが必要になっている
フラット35が3%を超えたことは、単なる金利ニュースではない。それは、住宅購入をめぐる前提が変わり始めていることを示している。
かつては、住宅価格が上がっても、金利が低いことで毎月返済額を抑えられた。しかし今は、住宅価格が高止まりしたまま、固定金利が3%台に入ってきた。
住宅ローンで本当に怖いのは、金利が上がることそのものではない。怖いのは、低金利が続く前提で、余裕のない借入をしてしまうことだ。フラット35の3%超えは、その前提を見直すタイミングが来たことを示している。
