2026年6月4日(木)
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住宅ローン市場に異変 固定と変動の差が過去最大級に

フラット35の最低金利が初めて3%を超えた。だが現場の関心は、固定金利の数字そのものより、変動金利との間に開いた「過去最大級の差」に移っている。借りる側は、何を基準に選べばいいのか。

住宅金融支援機構が6月1日に発表した「フラット35」の最低金利は3.21%。借入期間21年以上、融資率9割以下の条件で、2017年に現行制度となって以降、初めて3%台に乗った

前月比0.50ポイントという上げ幅も、近年では異例の大幅上昇となる。

もっとも、住宅ローンの相談窓口で交わされている話題は、この数字だけではない。4月に2.49%だったフラット35は、5月に2.71%、そして6月に3.21%。わずか2か月で0.72ポイント上昇した

1%台から2%台に上がるまでには数年を要したことを思えば、この2か月の動きは異常とも言えるスピードだった。

「自分たちが薦めていいものではない」

都内で住宅ローンを担当する、ある金融機関の行員は、客に金利タイプを尋ねられたときの本音をこう打ち明ける。

「正直に言えば、現場ではどちらが良いとは言えないんです。お客様に選んでいただくのが最優先で、私たちから『こちらが得ですよ』とは口にできない」

理由は単純で、利害が逆を向いているからだという。

「銀行にとって都合がいいのは金利の高い商品です。でもお客様にとって良いのは金利の低い商品。この二つは正面からぶつかる。だから現場では答えを出せない。ただ——もし自分が借りるとしたら、と聞かれれば、話は別ですが」

銀行は固定で貸しても変動で貸しても収益を得る。極論すれば、借りてくれさえすれば金利タイプはどちらでもいい、というのが貸し手側の本音に近い。だからこそ「どちらが損か」という問いに、現場は表向き沈黙する。

実際、利用者の多くはすでに変動金利を選んでいる。

住宅金融支援機構の調査では、住宅ローン利用者のおよそ8割が変動金利型を利用している。低金利の魅力が、金利上昇への不安を上回っている形だ。

一方で、同機構は「資金余力が小さい人ほど、金利上昇時の影響を受けやすい」とも整理している。

借入額が大きい。
返済期間が長い。
家計に余裕が少ない。

こうした条件が重なるほど、変動金利のリスクは大きくなる

固定金利だけが突出して上がった理由

今回、固定金利だけが突出して上がったのには理由がある。

フラット35のような全期間固定型は、市場の長期金利(10年国債利回り)に連動する。その長期金利が上昇し、固定型を押し上げた。

ただ、6月の上昇幅は市場関係者の間でも驚きを持って受け止められた。

これまで住宅金融支援機構は、長期金利が上がっても、利用者負担が急増しないよう一定程度金利上昇を抑えてきたとされる。だが今回は、その緩衝余地が限界に近づいたとの見方も出ている。

抑え込まれていたものが、一気に表面化した——そんな見方だ。

変動金利も、時間差で追ってくる

一方、変動金利はまだ大きくは動いていない。

しかし、変動金利も日銀の政策金利や短期金利の影響を受けて見直される。そして今、市場では追加利上げ観測が強まっている

ブルームバーグがエコノミストを対象に行った調査では、追加利上げ時期として6月会合や7月会合を予想する声が多くを占めた。現在0.75%程度の政策金利が、さらに引き上げられる可能性が意識され始めている。

もっとも、変動金利の負担増はすぐには見えにくい。

多くの銀行では金利見直しが年2回で、さらに「5年ルール」によって毎月返済額は急には増えない仕組みになっている。

だが、その間も利息割合は増え、元本の減りは鈍くなる。

負担は静かに、しかし確実に積み上がっていく。

結局、どう選ぶのか

取材した行員は、最後にこう付け加えた。

「もし自分だったら、という話なら——完済までの期間と、金利が上がったときに自分の家計が持つかどうか。その二つで決めます。短く返せる見込みがあるなら、低い変動を取りにいく。長く借りて、上昇に耐えられる自信がないなら、高くても固定で確定させておく。結局はそこに尽きるんです」

住宅ローンは、多くの人にとって人生最大の借金だ。0.1ポイントの差が、35年で数十万円から百万円単位の開きになる。固定金利の3%超えは、長く続いた超低金利時代が構造的に終わりつつあることを告げる節目でもある。

「変動か、固定か」。他人の出した答えを、そのまま自分に当てはめることはできない。自分の返済期間、家計の耐久力、そして今が歴史的にどんな局面か。その三つを重ね合わせたとき、ようやく自分にとっての答えが見えてくる。

※本記事は金利動向に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金利タイプや金融商品の利用を推奨するものではありません。住宅ローンの選択にあたっては、各金融機関の最新情報をご確認のうえ、ファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。

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