最近、日経平均株価は大きく上昇している。ニュースでは「日本株が強い」「史上最高値更新」「海外投資家が買っている」といった言葉が並ぶ。
しかし、実際に株を持っている人の中には、こう感じている人もいるのではないだろうか。
「日経平均は上がっているのに、自分の持っている株は全然上がっていない」
これは決して珍しい感覚ではない。なぜなら、今の株高は市場全体が均等に上がっているというより、一部のテーマ株に資金が集中している側面が強いからだ。その代表が、AI、半導体、データセンター関連である。
AIブームが株価を押し上げている
現在の株式市場では、AIに関係する企業が強く買われている。半導体、生成AI、データセンター、電力インフラ、光ファイバー、冷却装置、半導体製造装置。こうした言葉がつくだけで、投資家の注目を集めやすい。
もちろん、AIそのものは本物の技術革新だ。生成AIは仕事のやり方を変え、データセンター需要を押し上げ、半導体産業にも大きな影響を与えている。
しかし問題は、そこから先だ。本当に業績が伸びる企業だけでなく、「AI関連」「半導体関連」「データセンター関連」というだけで買われる銘柄も出てくる。実態よりも先に株価だけが走る。テーマ株の怖さはここにある。
なぜテーマ株は買われすぎるのか
テーマ株はわかりやすい。「AIが来る」「半導体が足りない」「データセンターが増える」。こう聞くと、投資家は未来を想像しやすい。しかも株価が上がり始めると、さらに人が集まる。
- 最初は業績期待で買われる
- 次に、テーマ性で買われる
- 最後は、「上がっているから買う」という人まで入ってくる
こうなると、株価は実態以上に膨らみやすい。企業の利益が10%増えるだけなのに、株価が50%、100%と上がることがある。テーマ株は、熱狂している間は強い。だが、熱狂が冷めた瞬間に急落する。
半導体株に見る急騰と急落
半導体株は、その典型例だ。AI需要が拡大する中で、半導体関連株は大きく上昇してきた。しかし、半導体はもともと景気循環の激しい業界でもある。
- 需要が増える → 設備投資が増える
- 供給能力が増える → やがて供給過剰になる
- 在庫調整が起きる → 株価が下がる
AI需要があるからといって、半導体株が永遠に上がり続けるわけではない。むしろ、期待が大きい分、少しでも成長鈍化が見えると大きく売られる。テーマ株の怖さは、悪材料ではなく「期待外れ」で下がる点だ。
過去のテーマ株はどうなったか
テーマ株ブームは、今に始まった話ではない。過去にも、何度も似たような熱狂があった。
EV関連株:電気自動車が世界を変える、ガソリン車は終わる。そう語られ多くの銘柄が買われた。しかしEV市場の成長は続いているものの、競争は激化し、利益率は低下した。
メタバース関連株:仮想空間が次のインターネットになる。多くの関連銘柄が注目された。しかし今、「メタバース関連だから買う」という熱狂は明らかに弱まった。
さらにその前には、バイオ株、太陽光発電、仮想通貨関連、ゲーム関連など。どれも一時代を作ったが、そのテーマの中で長く残った企業は一部だけである。
テーマは消えるのではない。選別される
誤解してはいけないのは、テーマそのものが完全に消えるわけではないということだ。AIは残る。半導体も残る。データセンターも残る。むしろ社会の中で重要性は増していくだろう。
しかし、株式市場で問題になるのは「技術が残るか」ではない。「今の株価が、その未来を織り込みすぎていないか」である。
どれだけ優れた技術でも、高すぎる価格で買えば投資としては失敗する。良い会社を買ったのに損をする。株式投資では、そういうことが普通に起きる。
テーマ株は短期投資には向いている
テーマ株がすべて悪いわけではない。短期投資としては、むしろ面白い。テーマに資金が集まっている間は、値動きが大きく、短期間で利益を狙えることもある。
問題は、それを長期保有と勘違いすることだ。
- 「AIは将来性があるから長期で持てば大丈夫」
- 「半導体は国策だから下がっても戻る」
- 「データセンター需要は増えるから安心」
こう考えて高値で買うと、数年単位で含み損を抱えることがある。テーマ株は、入口より出口が難しい。上がっている時は、まだ上がる気がする。下がり始めると、いつか戻る気がする。そして気づいた時には、テーマそのものが市場の主役ではなくなっている。
NISAでテーマ株を買う危険性
特に注意したいのが、NISAでテーマ株を買うことだ。NISAは利益が非課税になる制度だが、一方でNISA口座で損失が出ても、課税口座の利益と損益通算することはできない。損失の繰越控除もできない。
つまり、NISAで損をすると、その損失は税金面ではなかったことになる。
NISAは、本来長期投資に向いている制度だ。長く持つ、配当を受け取る、複利を効かせる。そういう使い方の方が制度と相性が良い。逆に、短期で売買する前提のテーマ株は、NISAとの相性が悪い場面もある。
NISAで買うなら「残る企業」を選ぶ
では、AIや半導体関連をまったく買ってはいけないのか。そうではない。大事なのは、テーマではなく企業を見ることだ。
- AI関連だから買うのではなく、その会社が本当に利益を出せるのか
- 半導体関連だから買うのではなく、景気が悪くなっても生き残れるのか
- データセンター関連だから買うのではなく、競争が激しくなっても収益性を維持できるのか
インターネットバブルの時代にも、多くの企業が消えた一方で、本当に収益を伸ばした企業は巨大企業になった。テーマ全体に賭けるのではなく、テーマの中で最後に残る企業を見極める必要がある。
ただし、それは簡単ではない。だから初心者ほど、「テーマだから買う」は危険なのである。
テーマ株の終わりはいつも静かに来る
テーマ株の終わりは、ある日突然やってくるわけではない。
- 最初は少しずつ出来高が減る
- ニュースで取り上げられる回数が減る
- 好材料でも上がらなくなる
- そして、悪材料には大きく反応するようになる
この段階に入ると、すでに熱狂は終わり始めている。ところが、保有している人ほど気づきにくい。「また上がるはず」「国策だから大丈夫」「将来性はある」。そう考えているうちに、株価だけが下がっていく。
テーマ株で一番怖いのは、企業が倒産することではない。期待だけが剥がれ落ちることである。企業は普通に事業を続けている。売上も出ている。利益もある。それでも、株価は下がる。なぜなら、以前の株価が未来を先取りしすぎていたからだ。
投資で大事なのは、流行に乗ることではない
AI、半導体、データセンター。これらは今後も重要な産業であり続けるだろう。しかし、それと株価が永遠に上がることは別である。
投資で大事なのは、流行に乗ることではない。流行が終わったあとも残る価値を見極めることだ。
テーマ株は夢を見せてくれる。しかし、夢には終わりがある。短期で乗るなら面白い。だが、長期で持つなら慎重であるべきだ。
NISAは、派手に勝つための口座ではない。長く残る資産を育てるための口座である。日経平均が上がっているからといって、焦ってテーマ株を買う必要はない。
本当に見るべきなのは、今上がっている株ではなく、熱狂が終わったあとも持ち続けられる株なのかもしれない。
📝 編集長メモ
テーマ株は、いつの時代も人を惹きつける。AI、半導体、データセンターという言葉には未来があるように見えるし、実際に未来はあるのだろう。ただし、未来があることと、今の株価が正しいことは別問題だ。株式市場では、正しい物語ほど買われすぎることがある。だからこそ、流行っている理由ではなく、流行が終わっても残る理由を見なければならない。
💰 編集長の儲け話
テーマ株で勝負するなら、短期で利益を取りに行き、いつでも逃げられる出口を用意しておくことが大切だ。AIだから買う、半導体だから買う、上がっているから買う。この流れに乗ること自体は悪くないが、テーマ株は降りるタイミングが難しい。一方、NISAで買うなら、長期で安定して持てる株を選びたい。私が注目しているのは、通信インフラとして安定収益が見込めるソフトバンク株式会社(9434)だ。
詳しくは[編集長の儲け話 特集]を確認してほしい。
※本コーナーは編集長個人の見解です。投資等の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
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